書評の続き2:緊急出版「差し迫る、福島原発1号機の倒壊と日本滅亡 回避できるのになぜしないのか?」
元三菱重工 主席技師 森重晴雄 せせらぎ出版 2023年12月初版第1刷 発行
この投稿では、前投稿 書評(続き1)に加筆し、2023(令和5)年3月の1号機ペデスタルの損傷発表以来、国と東京電力により行われた一連の対応を、原子力規制委員会の議事録や資料を追跡する形で明らかにする。
まず、参照して内容を検討する原子力規制委員会関連の資料リストを再掲する:
3)第24回原子力規制委員会 令和5年07月26日(水)10:30~12:00 開催
資料2 東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所の1号機ペデスタルの状況を踏まえた対応状況【PDF: 2.0MB】
この会合の主な目的は「本年5月24日の第12回原子力規制委員会での原子力規制庁への指示に対する対応の状況について報告する」ことであるとされ、経緯の中で、5月24日に原子力規制庁から東京電力に伝達された以下の3つの対応方針が再掲されている:
(1)格納容器に開口部ができるという 前提に立って環境に放射性物質が放出されるのか影響を評価し、
(2)環境に 影響があるという前提で対策を検討すること。並行して、
(3)ペデスタルの 機能が喪失したとして、圧力容器、格納容器に構造上の影響がないかどうかを 検討すること
この内(1)(2)については、6月5日に開催された技術会合(第10回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合、以下「1F技術会合」)で議論され、その結果について7月24日の第108回特定原子力施設監視・評価検討会(以下「監視・評価検討会」という。)において共有されたと説明があり、その中身として次のような要約がある:
(1)放射性物質の放出による影響の評価 ペデスタルの支持機能喪失によって格納容器に大きな開口が生じ、それに 伴って圧力容器の外表面汚染物、もしくは圧力容器内のデブリが飛散するケースを想定した場合においても、事象に伴って発生する放射性物質の飛散による敷地境界における実効線量は最大で 0.04mSv にとどまり、通常の実用発 電用原子炉の安全評価における事故時の基準である5mSvを大きく下回る。
(2)、、放射性物質の放出を抑制するために有効な対策は、格納容器への窒素封入を停止し放射性物質の押し出しを抑制することである。しかしながら、ペデスタルの支持機能低下及び開口の有無を直接検知することは困難であるため、あらかじめ、窒素封入を停止する手順を実施 計画に基づく運転管理に関する文書に定め、今後それに基づき対応を行う。具体的には、震度6弱以上の地震が発生した場合、もしくは格納容器内のダスト 濃度が上昇した場合には窒素封入を停止する。その後、格納容器内のダスト濃 度が事象発生前と同等であることを確認できた場合窒素封入を再開することとする。
対応する別紙2,3頁を下記に示す:
上記文章、及び資料もイマイチ解りにくいので、上掲議事録の中にある2つの発言を引用しておく:
○伴委員 質問というか、補足ですけれども、結局、開口部が生じたとしても、ダストの発生はあるものの、そもそも内部は高温・高圧ではないので、それを放出する動力源がないと。唯 一あるのは、窒素雰囲気にするために窒素の封入をしていますから、だから、それを止めてしまえば、もう本当に押し出す力がなくなりますので、それが一番確実な方法であると。 更に、窒素封入を停止したところで水素濃度が急激に上昇するようなことはなくて、東電の評価だと少なくとも数か月以上の余裕はあるということですので、その間に状況を確認 した上で、窒素封入を再開すればいいという合理的な考え方だと思っています。
○山中委員長 追加で、私が推測するのも妙な話ですけれども、東京電力の解析というのは、(1)と (2)、これを両方合わせてですけれども、ものすごく大きな穴が開こうが、ある一定の穴が開こうが、あるところを超えると、その放出量はほとんど変わらないよという、そう いう評価だと。つまり、差圧が立たなくなったら物は外に出ませんよという。だから、仮 にものすごく大きな穴が開いても、差圧が立たなくなるので、ダストは外に出ませんという、そういうモデルですよね。なので、(3)の結果がどうなろうとも(1)(2)は有効な結果であるという、そういう解釈をしておけばいいということですね。
「定常状態?が保たれれば、まあ最悪の事態にはならないだろう」という、若干心許ない結論の気がするが、、、。その詳しい説明は次の別紙1に記述されているが、かなり専門的なのでここでは詳細には踏み込まない。