「トリチウム水」問題の2回目としては、今政府、環境省、原子力規制委員会、東電によって隠されている「トリチウム水」の福島県沖への海洋放出がもし行われたらどうなるか?について扱っていきます。
いわゆる御用学者や忖度官僚が事実を隠蔽しつつ示す都合の良いデータ。これを確信犯的に「科学的根拠」として「海洋放出しかない」と声高に叫ぶ官僚や政治家(特に政権にへつらって無責任に大阪湾放出を引き受けようとする大阪府知事・市長)などには、前の記事も合わせ是非読んで頂きたいと思っています。これらを読んだ上でなお「海洋放出」の主張を変えないのであればその実効は、海洋放出の前に自分たちの家族に海洋放出水を十分長期間飲ませ、人体実験で安全性を証明した後にして欲しいと思います。彼らにそんな勇気があるとは思えませんが(笑)。
なぜなら、彼らはその主張に命をかけてはいないからです。これに対し、それらの海域で生活し生計を立てている、海洋放出に反対する漁民や地域住民の方々は、まさに命をかけた戦いを続けています。地域住民の要望・願いこそが真っ先に聞かれ、尊重されねばなりません。(参考文献:「海流に乗るトリチウム汚染水 東京近郊の太平洋沿岸まで汚染の可能性」ティム・ディアジョーンズ(英国の海洋汚染研究者・コンサルタント)DAYS JAPAN 2018年11月号)
1) トリチウムの生態系への影響の過小評価
*福島第一原発汚染水の現状
放射能に汚染された地下水+事故時に使用された緊急冷却水の残留水など=液体放射性廃棄物 約92万トン
⇨海洋放出へ(IAEA=国際原子力機関、原子力規制委員会、東京電力など)
*生態系への影響の過小評価仮説:「汚染水は無限に希釈され、沿岸の住民や海洋利用者に何ら脅威を与えない(食物連鎖、生物濃縮無し)」
次ページ以降で、‘90~ 原子力産業の影響下に無い独立した研究者たちによる新たな実証的な研究結果(⇔ 原子力産業の仮定)を紹介
2) 最近の新たな実証的研究
*‘93 英国の専門誌
環境中に放出されたトリチウムは、生物の体内に入りそれが細胞の有機物に取り込まれることで、長期に渡って排出されないといわれる有機結合型トリチウム(OBT)が生成されることが明らかにされた。
*‘01年の調査
核施設の液体排出地点から遠く離れた下流地点でも、排水地点と同程度の最高濃度のトリチウムが観測された。これは、生物に取り込まれてOBTとなるだけでなく、食物連鎖によって濃縮されていくことを明らかにした。
*’02年の英国の全海域をカバーした環境モニタリング
肉食生物や海底近くに住む魚のトリチウム濃度が草食生物のトリチウム濃度より高かった。これは食物連鎖に入り込んだトリチウムが生物濃縮されていることを示唆。
3)有機物と結合するトリチウムの性質
海岸沿いや沿岸地域で有機物の濃度を高めるような条件のある場合特に重要となる。
*具体例:
a) 海岸線が浸食されている、
b) 放射性物質以外でも有機物を放出するパイプラインがある、または、河川からの流れ込みがある、
このような場合には有機物の濃度が高まりよりOBTが生成されやすくなる!
*福島の海岸とその下流領域(福島以南の太平洋沿岸):このような有機物の流入源が多数存在 ⇒ 海流に乗って東京近海へ
4) 沿岸住民の被曝
*沿岸部住民(海岸から10マイル=16 km以内に住む人々)の被爆経路
- 食事の経路:汚染食材の摂取
- 環境的経路;エアロゾル(気体中に微粒子が浮遊している状態)、波しぶき、水蒸気、高潮による海から陸への拡散など
- 吸入経路:呼吸
*福島以南の海岸線で、沿岸住民の被爆を強く促す複数の条件:
- 福島沖の海流の動きは人口密集地帯を向いている。
- 本州太平洋岸の有機沈殿物の堆積は比較的高いレベルにある。
- 陸方向に吹く風や季節特有の暴風、沿岸の氾濫や高潮は海岸線でくだける大波を発生させ、海水飛沫やエアロゾルの生成を促進する。
5) 海流の影響
*福島事故の2年後にはカナダの大陸棚海域では、環境中のセシウム濃度が事故前の2倍に上昇!=汚染水放出が世界で注目される理由
6) 汚染水放出は現在も続いている!?
それにも関わらず
*太平洋沿岸の海水、野生生物、海産食品、潮流、沿岸地帯の陸上環境や住民の健康等についても未調査
☞ これまで放出されたトリチウムによる海岸地帯住民の被爆が「なかった」とする主張は重大なデータの欠落があり、立証もされていない!したがって、
*大量かつ高濃度の貯蔵汚染水の大量放出は計画は、科学的な根拠も正当性もなく禁忌である上に、太平洋沿岸住民が被る可能性のある健康被害に対し、あまりにも無責任である。