東電福島事故レポート (1)

本ブログにとっても東電福島原子力発電所事故は避けて通れない課題であるが、まずはこの記事を手始めに、民間や政府から出ている代表的な幾つかの報告書について、その資料本文と可能であれば関連コメントを順にアップして行きたい。そして未だ結論が出ていない(コンセンサスが出来ていない)、事故はなぜ起こったのか、また今後どうすべきかについて、特に若い研究者がじっくりと研究・考察するのに有用な基礎資料を提供して行きたいと考えている。第1弾は、民間事故調査委員会の一つであるFUKUSHIMAプロジェクト委員会によるFUKUSHIMAレポート(第1章)である。

FUKUSHIMAレポート はじめに、目次

FUKUSHIMAレポート 第1章

今回の公開にあたり筆者より小文を頂いているので、ここに掲載します。

WEB公開に当たって

ここに掲げた「東電福島第一原発事故調査報告書」は、2012年1月に出版した 『FUKUSHIMAレポート──原発事故の本質』  の第1章を再掲したものです。

2011年3月に福島第一原発事故が起きたとき、「事故原因をきちんと調べ上げ、どこに責任の所在があるかを明らかにすることは、日本に住む一人ひとりが地球人の一員として誇りをもってこれからも生きるために不可欠なことだ」と思いました。そこで、私たちは2011年4月に中立の立場で事故調査委員会「FUKUSHIMAプロジェクト」を立ち上げ、8人のチームで8か月間この事故の本質は何なのかについて調べ上げました。またいかなる団体からも独立して調査レポートを出版するために、出版のための寄付金を募りました。その結果、300人以上の方々から300万円を超える寄付金をいただき、500ページを超える調査レポートを1000円に満たない価格で出版することができました 。

この調査レポートでは、私は「なぜこんなことになってしまったのか」の直接的原因の分析をしました。判明した原因とは、「技術自体」ではなく「独占企業による技術経営の誤謬」です。全交流電源喪失になっても原子炉を冷やせる「最後の砦」が原子炉には設置されていて、これはきちんと動いた。したがってそれが動いている間に海水注入をしていれば、原子炉が暴走することはなかった。ところが東電の経営者は、その海水注入を拒みつづけた。これが事故の直接的原因です。

このweb版をお読みになった方々からも、ご忌憚のないご意見・ご批判を頂戴できれば、うれしく思います。

京都大学大学院教授 山口栄一
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