トリチウム水問題についてー(2) 海流に乗るトリチウム汚染水ー

「トリチウム水」問題の2回目としては、今政府、環境省、原子力規制委員会、東電によって隠されている「トリチウム水」の福島県沖への海洋放出がもし行われたらどうなるか?について扱っていきます。

いわゆる御用学者や忖度官僚が事実を隠蔽しつつ示す都合の良いデータ。これを確信犯的に「科学的根拠」として「海洋放出しかない」と声高に叫ぶ官僚や政治家(特に政権にへつらって無責任に大阪湾放出を引き受けようとする大阪府知事・市長)などには、前の記事も合わせ是非読んで頂きたいと思っています。これらを読んだ上でなお「海洋放出」の主張を変えないのであれば、その強行は、海洋放出の前に自分たちの家族に海洋放出水を十分長期間飲ませ、人体実験で安全性を証明した後にして欲しいと思います。彼らにそんな勇気があるとは思えませんが(笑)。

なぜなら、彼らはその主張に命をかけてはいないからです。これに対し、それらの海域で生活し生計を立てている、海洋放出に反対する漁民や地域住民の方々は、まさに命をかけた戦いを続けています。地域住民の要望・願いこそが真っ先に聞かれ、尊重されねばなりません(参考文献:「海流に乗るトリチウム汚染水 東京近郊の太平洋沿岸まで汚染の可能性」ティム・ディアジョーンズ(英国の海洋汚染研究者・コンサルタント)DAYS JAPAN 2018年11月号)

1) トリチウムの生態系への影響の過小評価

*福島第一原発汚染水の現状

放射能に汚染された地下水+事故時に使用された緊急冷却水の残留水など=液体放射性廃棄物 約92万トン

⇨海洋放出へ(IAEA=国際原子力機関、原子力規制委員会、東京電力など)

*生態系への影響の過小評価仮説:「汚染水は無限に希釈され、沿岸の住民や海洋利用者に何ら脅威を与えない(食物連鎖、生物濃縮無し)」

次ページ以降で、‘90~ 原子力産業の影響下に無い独立した研究者たちによる新たな実証的な研究結果(⇔ 原子力産業の仮定)を紹介

2) 最近の新たな実証的研究

*‘93 英国の専門誌

環境中に放出されたトリチウムは、生物の体内に入りそれが細胞の有機物に取り込まれることで、長期に渡って排出されないといわれる有機結合型トリチウム(OBTが生成されることが明らかにされた。

*‘01年の調査

核施設の液体排出地点から遠く離れた下流地点でも、排水地点と同程度の最高濃度のトリチウムが観測された。これは、生物に取り込まれてOBTとなるだけでなく、食物連鎖によって濃縮されていくことを明らかにした。

*’02年の英国の全海域をカバーした環境モニタリング

肉食生物や海底近くに住む魚のトリチウム濃度が草食生物のトリチウム濃度より高かった。これは食物連鎖に入り込んだトリチウムが生物濃縮されていることを示唆。

3)有機物と結合するトリチウムの性質

   海岸沿いや沿岸地域で有機物の濃度を高めるような条件のある場合特に重要となる。

*具体例:

a) 海岸線が浸食されている、

b) 放射性物質以外でも有機物を放出するパイプラインがある、または、河川からの流れ込みがある、

このような場合には有機物の濃度が高まりよりOBTが生成されやすくなる!

*福島の海岸とその下流領域(福島以南の太平洋沿岸):このような有機物の流入源が多数存在 ⇒ 海流に乗って東京近海へ

4) 沿岸住民の被曝

沿岸部住民(海岸から10マイル=16 km以内に住む人々)の被爆経路

  • 食事の経路:汚染食材の摂取
  • 環境的経路;エアロゾル(気体中に微粒子が浮遊している状態)、波しぶき、水蒸気、高潮による海から陸への拡散など
  • 吸入経路:呼吸

福島以南の海岸線で、沿岸住民の被爆を強く促す複数の条件:

  • 福島沖の海流の動きは人口密集地帯を向いている。
  • 本州太平洋岸の有機沈殿物の堆積は比較的高いレベルにある。
  • 陸方向に吹く風や季節特有の暴風、沿岸の氾濫や高潮は海岸線でくだける大波を発生させ、海水飛沫やエアロゾルの生成を促進する。

5) 海流の影響

 

*福島事故の2年後にはカナダの大陸棚海域では、環境中のセシウム濃度が事故前の2倍に上昇!=汚染水放出が世界で注目される理由

6) 汚染水放出は現在も続いている!?

それにも関わらず

*太平洋沿岸の海水、野生生物、海産食品、潮流、沿岸地帯の陸上環境や住民の健康等についても未調査

☞ これまで放出されたトリチウムによる海岸地帯住民の被爆が「なかった」とする主張は重大なデータの欠落があり、立証もされていない!したがって、

大量かつ高濃度の貯蔵汚染水の大量放出は計画は、科学的な根拠も正当性もなく禁忌である上に、太平洋沿岸住民が被る可能性のある健康被害に対し、あまりにも無責任である。

トリチウム水問題についてー(1)トリチウム自体の健康影響ー

今回から2回に分けて、最近議論になっている「トリチウム水」問題について、幾つかの資料を参考にして作成した要約(学習資料)をアップしていきます。一般の方々が家族や友人と議論を始めるきっかけになれば、と思っています。全体の予定目次は今のところ次のような内容とするつもりです。

  1. トリチウム、及び「トリチウム水」とは?
  2. 「トリチウム水」の中身
  3. 多核種汚染の影響
  4. トリチウム自体の健康影響
  5. 海流に乗るトリチウム汚染水
  6. 福島第一原発汚染水の現状

第1回目は、本質的かつ最も重要なな問題である、トリチウム自体が及ぼす健康影響、をまず扱ってみたいと思います(参考文献:「DNAに取り込まれるトリチウムとその健康影響」河田昌東DAYS JAPAN 2018年11月号)。

1) トリチウムの特異性

「トリチウム水」安全性の根拠(とされる主張):

  1. β(ベータ)線エネルギーが極めて小さい(紙一枚でも遮ることができる)
  2. (体内に入っても)普通の水と交換して短期間で体外に出て行く

これらは大きな誤りを含む。なぜなら、体内に入ったトリチウムは生物学的変化をする!すなわち、体内の有機物に取り込まれたトリチウムは有機結合性トリチウム(OBT, Organic Bound Tritium)となり、体内に長く留まる。そしてDNAに取り込まれる。

*DNA: 4種類の糖塩基(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシシチジン)で出来ており、これらの糖塩基にはたくさんの水素が付いている。

2)有機結合性トリチウム(OBT)の性質

*トリチウム水は(普通の水と同様)口、呼吸、皮膚を通じて体内に入り、細胞の中で様々な合成・代謝反応に関与し、水素と同様にタンパク質や遺伝子DNAの構成成分になる。

*体内の有機物に取り込まれた 有機結合性トリチウム(OBT)は、その分子が分解されるまで細胞内に長期間留まり(DNAの一部になったOBTの体内残留期間は15年以上;放射線生物学者ロザリン・パーテルによる)、

a) β線を出し続けて内部被曝をもたらす

b) 放射線被曝とは全く異なる仕組みでDNAをも破壊(以下そのメカニズム)

トリチウム→(β崩壊)→ヘリウム(極めて安定)

⇨トリチウムとDNAとの結合が切れる

=トリチウムと結合していたDNAを構成していた炭素や酸素、リンなどが

不安定になる⇨DNAの破壊!

3)トリチウム汚染の健康影響例(1)

*人間リンパ球の培養実験

DNAの構成要素の一つチミジンの水素をトリチウムで置き換えると、トリチウム濃度が37 Bq/mlくらいから染色体異常が始まり、190,000 Bq/mlでは100 %の染色体が破壊される。

*長期間のトリチウム投与実験

雌のリスザルに妊娠から出産までトリチウム水を飲ませると、生まれた子供の雌の卵巣には卵細胞が殆ど無かった(米国カリフォルニア ローレンスリバモア国立核研究所による長期間投与実験)

参考:福島第一原発のトリチウム汚染水の排出基準:60,000 Bq/l =60 Bq/ml

4)トリチウム汚染の健康影響例(2)-1

*現場被害1

イギリスブリストル海峡セヴァーン川河口、ヒンクリーポイント、バークレイオルドベリ両原発とニコムドアマーシャム放射化学実験所からの排水が下水道を通じて流入)

この廃水にはトリチウムが多く含まれる他様々な有機物が含まれていた。この海水のトリチウム濃度は10 Bq/mlであったが、海底の表層土壌には600 Bq/g、海藻(ヒバマタ)には2,000 Bq/g、ムール貝には10,000 Bq/g(いずれも乾燥重量当り)のトリチウムが含まれ、その殆どは有機結合性トリチウムであった(2001年論文)。

5)トリチウム汚染の健康影響例(2)-2

*現場被害2

カナダ オンタリオ湖周辺、カナダ特有の重水型原子炉8基がある。冷却材に重水を使うため原子炉内で大量にトリチウムが発生、大気とオンタリオ湖に廃棄されている)

周辺地域では出産異常や流死産、新生児のダウン症候群、心臓疾患や中枢神経の異常も増加(1978−85年、カナダの環境団体、シエラクラブカナダが論文で報告)。

*新生児に影響が大きい理由は、トリチウム水が母親の胎盤を透過して胎児のDNAに入り込み、盛んに分裂しつつある胎児のDNAを破壊するから。

 

伊方訴訟ニュース 第51号〜55号 (1977/11-1978/3月)

伊方訴訟ニュース第51号=第55号(1977/11-1978/3月)をアップします。

伊方訴訟ニュース第51号

国側を圧倒しつつ結審 判決は来年4月25日/被告(国)の採取陳述(原告側の反論陳述は次号掲載)/伊方2号炉異議申立 海底地質の再調査を要求

伊方訴訟ニュース第52号

マスコミ共斗などの抗議行動で四国電力の原発宣伝放映取りやめ/結審における原告側最終反論(前号の被告側最終陳述に対する陳述)/拝啓 柏木裁判長様 山口県田万川町一住民からの手紙

伊方訴訟ニュース第53号(20頁)

「伊方原発すぐ傍のトイの再調査を」2号炉異議申立住民ら追求/記録 被告申請人の証言に対する意見書/会員・読者の皆様への年賀状

伊方訴訟ニュース第54号

社会党国会議員調査団を迎えトイのボーリング調査で四電を追求/記録 被告申請人の証言に対する意見書(前号につづく)

伊方訴訟ニュース第55号

4月25日の判決を前に現地を中心に高まる緊張/2号炉異議申立棄却/異常値を無視して『変化なし』 県の放射線調査に住民抗議/内閣総理大臣への要請文/伊方原発視察旅行を終えて 蒲生田原発を阻止する椿町住民の会 平松地区 加茂 尚/『反原発新聞』 有志により発行の準備が進められています/書評 「ドキュメント原子炉災害」ジョン・G・フラー著 田窪雅文訳 時事通信社 ¥1,300

伊方訴訟ニュース 第46号〜50号 (1977/6-10月)

伊方訴訟ニュース 第46号〜50号 (1977/6-10月)をアップします。

いよいよ結審を迎えます。

伊方訴訟ニュース第46号 (20頁)

植村裁判長の腰痛を理由に松山地裁ふたたび公判取り消し/司法行政上の措置の申入書/申立理由補充書(三)/愛媛県伊方発電所の原子炉の設置変更(2号炉増設)許可処分に対する意義申立書/国側 恥知らずにも『門前払い』を裁判所に要求/第22回公判 松山地裁大法廷 6月23日(木)午前10時より 裁判官交替に伴う「弁論更新」

伊方訴訟ニュース第47号 (26頁)

柏木新裁判長の就任で結審めざして審理促進/申立理由書(三)後半(前半は前号に掲載)/被告(国側)準備書面(九)/「原発に未来なし」(歌)紹介/原告側準備書面(12)「伊方原子力発電所の危険性及び違法性の全て」増刷!/こんごの予定 第31回公判 7月28日(木)午前 生越 忠鑑定人 反対尋問 午后 木村敏雄鑑定人 反対尋問、7月29日(金) 午前 児玉勝臣被告側証人 反対尋問 午后 原告本人尋問 現地出張裁判8月18日(木) 午前 伊方原子力発電所現場検証 午后 川口寛之原告の臨床尋問、第32回公判 8月25日(木)8月26日(金) 原告本人尋問 この日で、すべての証拠調べ終了。

伊方訴訟ニュース第48号

第31回公判 しどろもどろの”権威ある”国側鑑定人/被告(国側)準備書面(九)公判(前半は前号に掲載)/最終準備書面作成のための資金借入れ計画の訴え

伊方訴訟ニュース第49号

『安全なもんなら、なぜ田舎に来て、住民をだますのか』/予備燃料搬入に抗議/資料紹介 「核燃料再処理工場」原子力情報資料室、「米連邦政府による原子力安全評価の歴史」科学、 1977年7月号/第33回公判 9月29日(木) 午前10時開廷 *裁判所からの求釈明に対する釈明、*原告最終準備書面の陳述。

伊方訴訟ニュース第50号

第33回公判 堂々たる原告側の最終陳述 被告の国は逃げ、結審は次回に/伊方2号炉第2回口頭異議申立 科学技術庁、住民側の追求に立往生/最終準備書面ができました!/第34回公判 結審の予定 10月27日(木)午前10時開廷 *被告側最終陳述、*原告側の反論陳述。

 

伊方訴訟ニュース第41号〜第45号 (1977/1-5月)

伊方訴訟ニュース第41号〜第45号をアップします。

伊方訴訟ニュース第41号 (22頁)

勝どきをあげよう 伊方原発反対八西連絡協議会 原告 福野誠一/証言記録15 柴田俊忍証人(原告側)の主尋問(その2)第13回公判 (1976/5/28)/第20回公判 松山地裁大法廷 1月27日(木)午前10時より 原告側 荻野晃也証人 反対尋問、原告側 星野芳郎証人 主尋問。1月28日(金)午前10時より 被告側 大崎順彦証人 主尋問、原告側 大野 淳証人 主尋問。

伊方訴訟ニュース第42号

国側証人は、まるで四国電力の技術員ー第19回公判傍聴席からー/原告・弁護団、執行停止決定の促進を申立て/申立理由補充書/原告準備書面(12)目次/「防災計画無しの運転は違法、四電に停止を命じよ」住民代表ら愛媛県に抗議/第20回公判 松山地裁大法廷 2月24日(木)午前10時より 原告側 星野芳郎証人 反対尋問、原告側 久米三四郎証人 反対尋問。2月25日(金)午前10時より 原告側 生越 忠鑑定人 主尋問、被告側 大崎順彦証人 反対尋問、原告本人 井上常久氏 主尋問。いよいよ原告の発言開始。執行停止を要求する気迫で法廷を満たそう!

特別カンパのご報告

伊方訴訟ニュース第43号

原告が語る四電の卑劣さに衝撃ー伊方訴訟公判を傍聴してー/証言記録16 海老沢 徹証人(原告側)の主尋問(その1)(第13回公判 1976/5/28)/愛媛県防災計画を発表/伊方原発所長代理 急性白血病で死亡/第21回公判 3月24日(木)午前10時より 原告側 大野 淳証人 反対尋問、被告側 児玉勝臣証人 主尋問、被告側 木村敏雄鑑定人 主尋問。国側の最後の証人登場。児玉氏は伊方の安全審査時の原子炉規制課長で、審査手続きの正当性をのべ、木村東大教授は、お金をかけた地盤鑑定結果を披歴する予定。来たるべき反対尋問におびえつつ。

伊方訴訟ニュース第44号 (22頁)

結審を目前に裁判長交替 最高裁に抗議と要請/国側証人の本音が聞きたい 伊方訴訟公判を傍聴して/国側「意見書」を提出

伊方訴訟ニュース第45号

原告、弁護団からの要請に対し最高裁から応答なし/「弁護団から」抗議と要請書/「原告団から」伊方原発行政訴訟担当裁判長更迭について 抗議並びに要請書/国側の意見書を読んで/国側「意見書」(第2部)を提出/第22回公判 5月26日(木)午前10時より 裁判官交替に伴う「弁論更新」 最高裁の不当な”人事”を追求し、同時に、本裁判の意義、経過、争点などを明らかにしつつ、裁判長らの自覚を促すために、法廷への結集を!

伊方訴訟ニュース 第36号〜第40号 (1976/8-12月)

伊方訴訟ニュース第36号〜第40号をアップします。公判記録が続くのでページ数が多くなっています。

伊方訴訟ニュース第36号 (24頁)

はじめて傍聴に参加し国や電力の「安全」の正体を知る/証言記録10 内田秀雄証人(被告側)の反対尋問(その4)(第13回公判 1976/5/27)/第16回公判(二日連続)9月16日午前10時より:被告側 川野慎治証人 反対尋問、原告側 槌田証人 主尋問。9月17日午前10時より:被告側 黒川良康証人 反対尋問、原告側 佐藤 進証人 反対尋問。

伊方訴訟ニュース第37号 (24頁)

巡視艇の威嚇と護衛で核燃料搬入 荒波の中奮戦する漁船軍/証言記録11 内田秀雄証人(被告側)の反対尋問(その5)(第13回公判 1976/5/27)

伊方訴訟ニュース第38号 (22頁)

傍聴の電力会社員のファイトも奪う被告・国側のおそまつな対応/証言記録12 村主 進証人(被告側)の反対尋問(その1)(第13回公判 1976/5/27)/第17回公判(二日連続)10月28日午前10時より:被告側 宮永一郎証人 反対尋問、原告側 市川定夫証人 反対尋問。10月29日午前10時より:被告側 垣見俊弘証人 主尋問、原告側 三島良績証人 反対尋問。

伊方訴訟ニュース第39号 (22頁)

このような人々に動かされる原子力技術は恐ろしい/証言記録13 村主 進証人(被告側)の反対尋問(その2)(第13回公判 1976/5/27)/第18回公判(二日連続)11月25日午前10時より:原告側 槌田証人 反対尋問、原告側 荻野晃也証人 主尋問。11月26日午前10時より:被告側 垣見俊弘証人 反対尋問、原告側 三島良績証人 反対尋問。

伊方訴訟ニュース第40号 (22頁)

伊方訴訟が問いかけている人間としての生き方/証言記録14 柴田俊忍証人(原告側)の主尋問(その1)(第13回公判 1976/5/28)/第19回公判(二日連続)1977年1月27日午前10時より:原告側 荻野晃也証人 反対尋問、原告側 星野芳郎証人 主尋問。1月28日午前10時より:被告側 大崎順彦証人 主尋問、原告側 大野 淳証人 主尋問

海外における最近のヨウ素剤配布

1.ロシアの爆発の正体は?原子力巡航ミサイル「ブレヴェスニク」の可能性も

海外メディアでも報道されたが、ほぼ2ヶ月前の8月8日、ロシアでミサイルの爆発事故が発生したらしい。

https://newsphere.jp/national/20190814-2

上記記事によれば、ロシアの国営原子力会社ロスアトムの職員5名が死亡したほか、3名が負傷。付近の放射線レベルはおよそ1時間にわたって上昇し、ヨウ素剤を求める市民で付近の街は一時騒然としたという。

【何があったのか?】(地図1,2)

詳細は以下のようであったらしい:事故が起きたのは北極圏にあるネノクサ(Nenoksa)に近い海上軍事演習場。実験に関与していたロスアトムの責任者によると、ミサイル試験の完了後に突如として炎が上がり、エンジンが爆発したという。これにより技師達が海に投げ出され5名が死亡したほか、爆風を受けた3名が負傷している。

現場から約40 km東にあるセベロドビンスク(人口19万人)市内では事故後40分間にわたって放射線量の上昇が確認され、一時2マイクロシーベルト/時(その後0.11に低下)の数値を記録。線量上昇の情報が市内に知れ渡ると、街は一時パニック状態になり、ヨウ素剤を求める人々が薬局に殺到したという(下記New York Times記事)。

https://www.nytimes.com/2019/08/12/opinion/russia-explosion-nenoksa.html

セベロドビンスクとモスクワの位置関係

地図1 セベロドビンスクとモスクワの位置関係

ネノクサ(セベロドビンスク西方約30 km)

地図2 爆発があったネノクサ(セベロドビンスク西方約30 km)

【ロシア政府の無責任な対応】

当初ロシア政府は液体燃料ロケットの爆発だと発表していたが、ロケットの動力源に放射性同位元素を用いていることを事故から二日経って認めた。ロシア政府のずさんな対応に、欧米メディアは不信感を露わにしている。上記NYTの記事は「チェルノブイリでの原発事故の際と同様、あたかも深刻な事態が起きていないかのように当局は情報統制を行った」と伝えている。今回は一般市民の生命に危害は及ばなかったが、「ロシア政府は国民と世界に事実とリスクの大きさを説明するよりも、保身に興味があることが改めて証明された」とも糾弾している。実際、セベロドビンスク市の公式サイトは放射線量の情報を伝えていたが、不可解なことにこの情報は現在同サイトから削除されているらしい。

ブルームバーグ

https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2019-08-12/russia-s-missile-explosion-means-it-failed-two-tests

はこうした動きを報じ、「(事故に)続くロシア政府の曖昧で断片的な説明から明らかなように、原子力事故の真実を世界あるいは自国民に伝えることを同政府には期待できない」と対応の稚拙さを糾弾している。またブルームバーグはミサイルの動力源として、原子力電池の一種である「放射性同位体熱電変換器(RGT)」が使用されていた可能性を指摘しているが、RGTでなく小型の原子炉が試験されていた可能性もありうると述べている。ロスアトムが発表している動画によると、動力源を説明する例として米NASAが手がけるキロパワー計画に言及している。これらから、欧米の識者の一部、あるいは米政府関係者の間にも今回の爆発事故は、小型原子炉を搭載する原子力巡航ミサイルだった可能性が高いという認識が広がっている。もっともBBC

https://www.bbc.com/news/world-europe-49319160

によればプーチンやロスアトムの宣伝にもかかわらず、計画は長年にわたり失敗続きであると指摘している。

ここでわれわれが気になるのは、(小型)原子炉を動力源とする艦船は、世界中の海軍などに多数保有されていることである。米軍の原子力空母は頻繁に日本に寄港しているし、ロシア、中国、米国の原子力潜水艦も日本近海に常に多数航行している。これらの艦船が何らかの事故や操作ミス等で爆発、沈没する可能性は常にある。例えば、空母が帰港する横須賀や佐世保の住民に安定ヨウ素剤を配布しておく必要は本当に無いのであろうか?

 

2.フランス、原発周辺住民220万人に安定ヨウ素剤配布、放射能漏出に備え

AFP(9月18日)によれば、フランス国内の原子力発電所19カ所の周辺に住む220万人に対して、放射能事故が起きた場合に服用するための安定ヨウ素剤が近日中に配布されるということである。フランス原子力安全局(ASN)が17日に明らかにした。

 ASN6各原発の避難区域を2016年に定められた半径10キロから20キロに拡大これに伴い16年時点で安定ヨ素剤が配布されていた375000世帯に加え今回さらに220万人に追加配布される薬局でヨウ素剤を受け取ることが出来る証明書が、数日内に原発付近の住民に発送される。

https://www.afpbb.com/articles/-/3245100?cx_part=search

3.米TVドラマ「チェルノブイリ」で人気上昇、リトアニアの閉鎖原発ツアー

【イグナリナ原発】

9月1日のAFPの記事

https://www.afpbb.com/articles/-/3240859?pid=21548397&page=1

によれば、リトアニア東部にあるイグナリナ(Ignalina)原子力発電所で3時間に及ぶツアーに参加していた米国人男性は、廃炉となった原子炉の屋根を歩きながら、「全然怖くない」と話したと言う。

このTVドラマに関しては、次の記事が参照できる。

https://www.cinematoday.jp/page/A0006858

https://www.cinematoday.jp/news/N0111235

https://www.cinematoday.jp/news/N0110849

全編を日本で視聴できる日も近い?ようであるが、私はまだ見ていないが。

イグナリナ原発はチェルノブイリ(Chernobyl)原発と設計が類似しており、昨年はベーケーブルテレビ局HBOの人気ドラマ「チェルノブイリ」の屋外シーンがここで撮影された。旧ソ連時代に造られた同原発は以前から一般公開されていたが、5月のドラマ放映開始以降は観光客が急増。観光客は、白いつなぎを身に着け、原子炉の屋根を歩いたり、ドラマに似せてつくられた指令室など様々な設備を見学したりする。7月の来場者数は900人(多くは国内観光客だがポーランド、ラトビア、英国からの観光客も含まれる)に及び、年内のツアー予約は「ほぼ埋まっている」らしい。

【ダークツーリズム】

ウクライナ同様、旧ソ連の一部だったリトアニアは2009年12月、チェルノブイリ原発と同じ形式の原子炉2基を擁していたイグナリナ原発の廃炉に向けた作業を開始した。2004年に欧州連合(EU)に加盟する際、リトアニアは交換条件としてイグナリナ原発の閉鎖を求められていたからである。

ドラマ「チェルノブイリ」のロケ地となったリトアニアの他の町でもツアーが行われるようになった。首都ビリニュス北部のある町は、チェルノブイリ原発事故後に立ち入り禁止となった人口約5万人の町、プリピャチ(Pripyat)という設定で撮影に使われた。地元のある若者は、祖父が所有する旧ソ連時代のアパートを改装し、民泊仲介サイト「エアビーアンドビー(Airbnb)」に登録したという。

【隣の原発に対する不安】

だが、ドラマ「チェルノブイリ」は、リトアニア人たちの好奇心とプライドをかき立てただけではなく、隣国ベラルーシに建設された新たな原発に対する不安も増大させたようである。ロシア国営エネルギー企業ロスアトム(Rosatom)が主導するこの原発には、発電容量1200メガワットの原子炉2基が設置されており、年内に稼働を開始する予定だ。リトアニア政府は、国境から20キロしか離れていないベラルーシ北西部オストロベツ(アストラヴェツ)(Ostrovets)にあるこの原発について、安全基準を満たしていないと主張しているが、ベラルーシ政府はそれを一蹴している。

リトアニアの芸術学校で働く27歳の女性は「チェルノブイリのドラマの影響は大きい。友人とこの問題(原発の危険性)について話し合っている」と述べた。リトアニア当局は最悪の事態に備えている。同国内務省によると、特定の放射線被ばくを回避できるヨウ素剤を備蓄している他、避難経路の確保や緊急警報の訓練などを行っているという。

下の地図3, 4を見てみると、ビリニュスーオストロベツ間は、約40 km離れているが、その距離は電源開発の大間原子力建設所と函館市との距離とほぼ同じである(地図5)。函館市の市民が不安を感じるのはごく当然のことであり、裁判を進めるのと並行して、ヨウ素在配布や避難訓練の準備が必要になってきていると思われる。

地図3 リトアニアの首都ビルニュスとベラルーシのアストラヴェツ

地図4 ビルニュスとアストラヴェツ(国境を挟んで約30 km)

地図5 大間原子力建設所と函館市(縮尺は地図4と同じ。約30 km?)

伊方訴訟ニュース 第31号〜第35号 (1976/3~7月)

伊方訴訟ニュース第31号〜第35号をアップします。前回に続いてページ数の多いニュースとなっています。公判記録は読み応えがありますね。

伊方訴訟ニュース第31号(26頁)

第12回公判に参加して 内田証人を追いつめる 原告、弁護団、傍聴者一体の斗い/証言記録5 藤本証人(原告側)の反対尋問 (第11回公判 1976/1/29)/【新聞記事】伊方原発訴訟 関電高浜でも”減肉” 国側証人が明かす 伊方と同型 防止剤替えても (愛媛新聞 1976/2/27)/高松高裁、敷地内の土地に断行仮処分 伊方原発設置反対共斗委員会

伊方訴訟ニュース 第32号 (28頁)

松山地裁、敷地内の土地に断行仮処分 苦悩の中で不退転の決意/証言記録6 村主証人(被告側)の主尋問(第11回公判 1976/1/29)/第13回公判 4月22日午前10時 松山地裁大法廷

伊方訴訟ニュース 第33号(22頁) 

ストを口実に国側逃避 原告ら裁判長に厳しく抗議/証言記録7 内田秀雄証人(被告側)の反対尋問(その1)(第12回公判 1976/2/26)/第13回公判 2日間連続 松山地裁大法廷5月27日午前10時より 被告側 内田、村主両証人の反対尋問 5月28日午前10時より 原告側 柴田俊忍証人 被告側 三島良績証人 の主尋問

伊方訴訟ニュース 第34号 (24頁)

第13回公判 対照的だった原告、被告の攻防/証言記録8 内田秀雄証人(被告側)の反対尋問(その2)(1976/2/26)/伊方原発用燃料、徳山港を狙う!/第14回公判 2日間連続 松山地裁大法廷6月24日午前10時より 原告側 川野慎治、佐藤進両証人の主尋問 6月25日午前10時より 被告側 三島良績、黒川良康両証人 の主尋問

伊方訴訟ニュース 第35号 (28頁)

第14回公判 蒸気発生器の驚くべき実態明らかに/証言記録9 内田秀雄証人(被告側)の反対尋問(その3)(1976/2/26)/伊方原発用燃料の搬入できず/第15回公判 2日間連続 松山地裁大法廷7月22日午前10時より 原告側 柴田俊忍、海老沢徹両証人の反対尋問 7月23日午前10時より 被告側 宮永一郎証人 原告側 市川定夫証人 の主尋問 わが国の裁判では例を見ない、集中審理の苦しみを乗り越え、引き続き追撃を!

 

 

 

伊方訴訟資料 1976年

ニュース以外の伊方訴訟関連資料を幾つかまとめてアップします。

主に1976年に印刷・発行されたものです。

伊方訴訟資料 1976年

内訳:伊方原発設置許可取消行政訴訟 裁判斗争支援の特別カンパの訴え/ニュース第2号(1976/7/12発行)「反原発国際会議」に代表を送る会/【ビラ】伊方原発粉砕労学共斗3名不当逮捕さる!絶大な支援と圧倒的カンパの集中を!/「朝日ジャーナル」記事”ゲンパツ”にあらがう人びと-愛媛県西宇和の住民運動をみる-(1973/2/23号)/垣見証人証言要旨/雑誌「原子力工業」記事”間もなく結審 伊方原発訴訟 -インタビュー 科学技術庁安全審査管理官 堀内純夫氏に聞く- (第23卷 第10号)

伊方訴訟ニュース 第26号〜第30号 (1975/10-76/2月)

伊方訴訟ニュース 第26号〜第30号をアップします。公判記録が多いためページ数がずいぶん増えています。

 

伊方訴訟ニュース第26号

国側、企業ベッタリを露呈 第8回公判(50.9.25)を傍聴して/決定無視の範を示す国側の”語録”/原告、被告双方から申請された証人/文書提出命令に対する高松高裁決定を得て(終稿) 伊方原発訴訟弁護団 平松耕吉/辛抱することは行動することより難しい 伊方原発に原子炉搬入/第9回公判10月23日午前10時松山地裁大法廷 原告側 藤本陽一証人の主尋問

伊方訴訟ニュース第27号(20頁)

榎本陽一証人の陳述法定圧す 逃げの一手の国側の姿勢/証言記録1 藤本陽一証人(原告側)の主尋問(第9回公判1975年10月23日)(前半)/わが国の原子力発電の生い立ち/大量の放射能の生成と蓄積/放射線障害について/これまでの原子炉事故の教訓/放射能の無毒化は不可能/事故の災害評価の不一致はどこから/安全審査における災害評価のカラクリ「格納容器は絶対にこわれない」/第10回公判11月27日午前10時松山地裁大法廷 被告側 内田秀雄証人の主尋問

伊方訴訟ニュース第28号(20頁)

第10回公判 さえない内田証言/証言記録2 藤本陽一証人の主尋問(後半)/格納容器は壊れないのか?/安全審査のカラクリはどこに/仮想事故とは何なのか/「想定不適当事故」で逃げる/破滅事故の確率は計算できるのか/確率論で扱えることなのか/残る問題はECCS(緊急炉心冷却装置)の信頼性/お粗末な計算方式/ECCSはPWRの泣き所/第11回公判1月29日午前10時松山地裁大法廷 原告側 藤本陽一証人の反対尋問 被告側 村主 進証人の主尋問(傍聴歓迎)

 

伊方訴訟ニュース第29号(24頁)

会員、ニュース読者から激励の言葉 「いまなら、原発を止めることができる 皆さん、がんばろう!」/証言記録3 内田秀雄証人(被告側)の主尋問(第10回公判)(前半)/「私は第一級の専門家です」/安全審査の手続きについて/ウインズケールやSL-1の事故とは無縁/事故ではなく「現象」だ/安全確保の基本的考え方/平常運転時の安全性/事故防止対策/現場検証 1月30日午后 伊方原発建設現場

伊方訴訟ニュース第30号(24頁)

第11回公判の現場検証を斗って 顔面蒼白の国側代理人 重い状況の中で自信を深める原告団/証言記録4 内田秀雄証人(被告側)の主尋問(第10回公判)(後半)/「安全保護系」の特徴/立地審査のための想定事故とは?/ラスムッセン報告は信頼性は薄いが、総花的には大事故の確率は低いという結論/蒸気発生器とは/蒸気発生器の欠陥とその原因/放射能が漏れても運転できるのだが…/第12回公判 2月26日午前10時 松山地裁大法廷 被告側 内田、村主両証人の反対尋問 (立証段階での一つの山場。原告、弁護団、傍聴者一体となって国側に痛打を!)