伊方訴訟ニュース第6号〜第10号 (1974/2-6月)

続いて第6号〜第10号をアップします。

伊方訴訟ニュース 第6号1面

伊方訴訟ニュース 第6号

松山地裁一方的に四電を支持 伊方「土地裁判」に判決/立木仮処分申請に抗議 四電営業所前で無期限の座り込み/原電東海2号炉行政訴訟 2月21日に第1回公判

伊方訴訟ニュース 第7号

(ごまかし)と(居直り)一層明白に 国側第1回準備書面を提出/(強制執行停止決定)闘い取る−−伊方「土地裁判」−−/伊方原発の建設中止を求め県庁で座り込み/四斗俵をかつげたら五斗俵−−伊方原発阻止斗争のねばり−−/日本原電東海2号原発反対行政訴訟に参加して

伊方訴訟ニュース 第8号

国側「めやす」は基準と白状! 3補佐人の参加を勝ち取る 伊方行政訴訟第2回公判から

伊方訴訟ニュース 第9号

矛盾を深める原発ゴリ押し作戦/伊方の人々 この一連を伊方に斗う人々に捧ぐ (関 久子)/関 久子氏への手紙から(大沢イサヲ)

伊方訴訟ニュース 第10号

国側苦しい答弁と居直り 「法廷を公開安全審査の場に」の条件整う/伊方原発安全協定要項(伊方町側素案)/「岩佐訴訟を支援する会」への呼びかけ/柏崎・刈羽から全国の同志の皆さんへ 原発計画の電調審認可を阻止しよう/東海2号原発設置阻止訴訟第2回公判

東電福島事故レポート (1)

本ブログにとっても東電福島原子力発電所事故は避けて通れない課題であるが、まずはこの記事を手始めに、民間や政府から出ている代表的な幾つかの報告書について、その資料本文と可能であれば関連コメントを順にアップして行きたい。そして未だ結論が出ていない(コンセンサスが出来ていない)、事故はなぜ起こったのか、また今後どうすべきかについて、特に若い研究者がじっくりと研究・考察するのに有用な基礎資料を提供して行きたいと考えている。第1弾は、民間事故調査委員会の一つであるFUKUSHIMAプロジェクト委員会によるFUKUSHIMAレポート(第1章)である。

FUKUSHIMAレポート はじめに、目次

FUKUSHIMAレポート 第1章

今回の公開にあたり筆者より小文を頂いているので、ここに掲載します。

WEB公開に当たって

ここに掲げた「東電福島第一原発事故調査報告書」は、2012年1月に出版した 『FUKUSHIMAレポート──原発事故の本質』  の第1章を再掲したものです。

2011年3月に福島第一原発事故が起きたとき、「事故原因をきちんと調べ上げ、どこに責任の所在があるかを明らかにすることは、日本に住む一人ひとりが地球人の一員として誇りをもってこれからも生きるために不可欠なことだ」と思いました。そこで、私たちは2011年4月に中立の立場で事故調査委員会「FUKUSHIMAプロジェクト」を立ち上げ、8人のチームで8か月間この事故の本質は何なのかについて調べ上げました。またいかなる団体からも独立して調査レポートを出版するために、出版のための寄付金を募りました。その結果、300人以上の方々から300万円を超える寄付金をいただき、500ページを超える調査レポートを1000円に満たない価格で出版することができました 。

この調査レポートでは、私は「なぜこんなことになってしまったのか」の直接的原因の分析をしました。判明した原因とは、「技術自体」ではなく「独占企業による技術経営の誤謬」です。全交流電源喪失になっても原子炉を冷やせる「最後の砦」が原子炉には設置されていて、これはきちんと動いた。したがってそれが動いている間に海水注入をしていれば、原子炉が暴走することはなかった。ところが東電の経営者は、その海水注入を拒みつづけた。これが事故の直接的原因です。

このweb版をお読みになった方々からも、ご忌憚のないご意見・ご批判を頂戴できれば、うれしく思います。

京都大学大学院教授 山口栄一
*ご意見等は「問い合わせ」からのメールでお願い致します。

 

伊方訴訟ニュース 創刊号〜第5号 (1973/9月-74/1月)

反原発訴訟の草分けの一つとも言える伊方訴訟ニュース(伊方行政訴訟を支援する会編)のバックナンバーを順次アップロードしていきます。現在のところフリーダウンロードできます。今回は創刊号〜第5号です。

伊方訴訟ニュース 創刊号(1973年)

伊方原発行政訴訟にあたり全国の皆さんへ/松山地裁に訴状を提出 弁護団の顔ぶれ/里道を返せ 告発状

伊方訴訟ニュース 第2号

早期に公判を−−弁護団松山地裁に申し入れ−−/田中首相発言の『真相』/四電の里道破壊全国的問題に−−地元住民、戒能氏に協力要請−−/欺まんに満ちた福島原発公聴会

伊方訴訟ニュース 第3号

国側、ようやく答弁書を提出/東海村周辺住民も行政訴訟

伊方訴訟ニュース 第4号

第1回公判12月20日に決定/不法な里道払下げに対し異議申し立て

伊方訴訟ニュース 第5号

第1回公判 法廷を圧する原告団、弁護団、支援者の意気/里道を通って炉心まで 目をみはる住民運動の底知れぬ力

 

 

 

本の紹介(1)

紹介したい本は以下の2冊である。

  • 核実験地に住む アケルケ・スルタノヴァ 花伝社 ¥2,000+税
  • セミパラチンスク 草原の民・核汚染の50 森住 卓 高文研 ¥2,000+税

著作1:核実験地に住む アケルケ・スルタノヴァ

 書名から想像できるように、これら2冊の本は、中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の核実験場の一つであるセミパラチンスク(現在のカザフスタン共和国*1の東北部)における第2次大戦直後から始まった永年にわたる数多くの核実験による大規模な被爆・核被害を扱ったものである。

 著作1)は昨年に出版された比較的新しい書籍で、その中身は第1部 セミパラチンスクでのフィールドワークから、第2部 「正史」としてのセミパラチンスク核実験場で構成されており、第1部はさらに5つの章、セミパラチンスクにおけるソ連の核実験、「正史」が語ること、隠すこと、住民の証言の中の被ばく、「実験台」としての住民、治療なしの診察・入院、インタビューを振り返って、を含む。この構成を見ると、「論文のようだね」という印象を持たれる方も多いと思われるが、本書は正に、セミパラチンスク出身の筆者(アケルケ・スルタノヴァ Akerke SULTANOVA)さんが、日本の大学で執筆した修士論文をベースに生み出された著作なのである。「論文」とは言っても、内容は多岐に渡った臨場感あるルポルタージュになっており、筆者の日本語の学習成果が反映され、文章は平易で読みやすくごく普通の日本人にとっても容易に読了できるものとなっている。

 本書の重要な特色は、筆者が現地の出身者であることを十二分に活かした、これまで殆ど記録が無いと思われる、様々な性別、年齢の男女への大規模な聞き取り調査の報告でもある点であろう。核実験(この実験場では1949-1989の40年間に456回行われた!)の様々な(住民の健康面に留まらず、農業や牧畜産業の面における)被害は、四国に匹敵するような広い範囲に及び約200万人が被爆したにも拘らず、旧ソ連時代には語ることは事実上タブーで、健康調査や医療サービスについてもその結果の多くは個人的にも社会統計的にも明らかにされることは殆どなく、秘密裏に進められた。このように、極めて不十分ないわゆる「正史」しか存在しない状況に対し、1990年代以降とはいえ、系統的な聞き取り調査により、極めて深刻な核被害者となっていた当事者の生の声を記録しているのは極めて大きい意義をもつと考えられる。

 またこのような著作が世に出るにあたり、幸いにも、筆者の高校生の時の広島への留学経験をきっかけとし今日まで永年培われてきた、日本との様々な関係が多少なりとも貢献しているらしい点にも注意すべきである。

 2度の原爆被害と福島原発事故を経験した私たちがなすべきことは、重厚長大産業の生き残りのための時代遅れの国策原発輸出などではなく(既に殆ど頓挫しているが)、これまでの医療面、被害調査面での膨大な蓄積や、福島での失敗した事故対応経験などを隠蔽することなく世界に発信し、同様の問題に悩む多くの世界の人々に貢献することでは無いだろうか?本書は、核に関してわれわれが今後進むべき民間国際協力の方向性をも示唆しているように思われる。

著作2:セミパラチンスク 草原の民・核汚染の50 森住 卓

  著作2)は、1951年生まれのフォトジャーナリスト 森住 卓(たかし)氏の著作で、複数の章を受賞したセミパラチンスクに関する最初の著作「旧ソ連セミパラチンスク核実験場の村—−被爆者のさけび」1995年自費出版、に続くものである。内容は、文章部分こそカザフスタン共和国の紹介と「それは祖国への核戦争だった――草原に核汚染の現実を追って」というルポルタージュという形式を取っているが、容易に想像できるように、文章に併せて掲載されている多くの圧倒的なヴィジュアル=写真こそ本書の一大特色である。その中には、カザフスタンの自然、人々の生活に加え、被爆によると思われる動物の奇形や幼児・子どもの様々な身体的症状が記録されている。この意味で、正に著書1)を的確に補足するものとなっている。われわれはこれらに眼を背けずしっかりと対峙する必要がある。そして、これらの、特に想像を越えた健康被害について「あれは命令されたことをやった結果にすぎない」、「核実験との因果関係は証明されていない」などと言っている旧ソ連の様々な人々を許して良いのであろうかということである。少なくとも共産党、軍の官僚や全てのデータを持ち去り未だ殆ど公開していない現ロシアの官僚は直ちにデータを公開し、核実験・健康被害調査の全貌を明らかにし、(因果関係究明はともかくとして)残された被害者の救済を始めるべきであろう。そして、われわれ日本人も被爆国でかつフクシマを生み出してしまった存在として、彼らへの支援連帯行動に微力でも参加すべきではないだろうか?

*1 ロシア連邦の南、中国の西に隣接しており、旧ソ連邦時代には連邦の1構成国カザフ・ソビエト社会主義共和国であったが、ソ連崩壊にともない1991年12月に独立した。